「雪那さんは、今はなにを?」
「予約を取る必要もないし、部屋割りもしなくていいから、今は掃除や洗濯を引き受けているわ。私にできないことはないの」


少々自慢げに話す彼女は、プライドが高いあやかしな気がする。

『できないことはない』と言いきったものの、おそらく料理はできないのだろう。

もちろん、そこを突っ込むと鉄拳が降ってきそうだから黙っておくけど。


「そうでしたか。よろしくお願いします」


一応丁寧に頭を下げると、彼女は満足そうだ。


「あぁ、あんた。鬼童丸さまに近づいたらただじゃおかないから」
「ん?」


いきなりにらまれても意味がわからない。


「雪那さんは鬼童丸さまにぞっこんなんですよ。鬼童丸さまはそうでもない――」
「勘介!」


また口を挟んだ勘介くんに、雪那さんは鬼の形相。
雪女ではなく、鬼女の間違いじゃない?というほどの迫力があった。

しかし『ぞっこん』という単語を久しぶりに聞いた。