今度は別の箱。
これは桜庵の冷蔵庫より充実しているかも。

でも、冷蔵庫でもないのにひんやりとしているのはどうしてだろう?


「これ、冷たいね」
「あぁ、それは雪那(ゆきな)さんの仕事で……」
「雪那さん?」


また新しい名前が出てきて首を傾げる。


「宿のほうに住んでいる雪女の雪那さんです。雪那さんがひと吹きすると、三日は冷たさが保てます。白蓮さまより年上で、この宿の長老のような……痛っ」


意気揚々と説明を始めた勘介くんの頭に、鉄拳が降ってきた。


「長老って失礼ね。そんな歳じゃないわよ! 大体、軽々しく女の歳について触れるんじゃないよ」


色白の背の高い女性は、おそらくその雪那さんだろう。

白蓮さんが何歳なのかは知らないが、雪那さんが特に老けているようにも見えないし、女性としては色っぽくてうらやましいくらいだ。