「使えるから捨てないで」


きょとんとしている彼女の前に勘介くんが歩み寄っていく。


「彩葉さま、お目覚めになったんですね!」
「はい。着替えさせてくれたそうで、ありがとうございます」
「とんでもありません。またお話しできるとは。あぁ、胸が苦しいほどうれしいです」


頬を上気させて喜びをあらわにしてもらえるのがうれしいのに、前世を覚えていない私にはピンとこない。


「あ……ごめんなさい。私、記憶がなくて」
「そんなことはいいんです。もう、胸がドクンドクンと反応しています。白蓮さまはなおさらだったでしょうね。白蓮さま、正気?」


彼女は勘介くんに尋ねている。


「さあ。でも彩葉さまがこちらにいらっしゃってからは、そわそわして落ち着きがないと鬼童丸さまが」


白蓮さんがそわそわ? 
そんなふうには見えなかったけど……。


「それより彩葉さま、捨ててはいけないとはどういうことです?」