「そういえば、鬼童丸さまって?」
「白蓮さまの右腕となるお方です。そのうち会われるのでは?」


右腕ということは、強いあやかしなのだろう。

階段を通り過ぎると右手には玄関の大広間。さらに進むと大きな扉があり、いったん屋根付きの外廊下を通り別の建物に入った。

こちらにももうひとつ玄関がある。
現世で言えば二世帯住宅のようだ。


「ここからが宿屋になります。台所はすぐそこです」


ここまでもそこそこ距離があったので、やはり母屋そのものも大きいらしい。

勘介くんに従い左の奥に進むと、なにやら焦げ匂いがしてくる。


「あー、もう! また焦げた」


甲高い声は和花さんだろうか。

開いていた扉の中を覗くと、大量のおこげを捨てようとしているので飛び出した。


「待った!」
「はっ!」


私の大きな声に驚いた和花さんは、私より少し小さいかわいらしい印象の女性のあやかしだった。