「そう。それじゃあ人間は嫌いかしら?」
「最初はそうだったと。でも、彩葉さま――あっ、以前のですが――が本当にお優しくて。一緒に料理を作ったりしているうちに、いい人間がいることも知ったと言っていましたよ。でも、残念ながら料理の腕は上達しませんでした」
「私、が……」
まったく記憶はないけれど、前世の私は優しかったようだ。
廊下を歩いていくと左手に階段がある。
「二階があるのね?」
「僕や和花、あとは鬼童丸さまの部屋が二階にあります。以前、彩葉さまがいらっしゃったときは『一階は新婚さんの部屋だからむやみに入るな!』と鬼童丸さまに大目玉を食らいまして……」
「あはっ」
覚えていないとはいえ、そんなふうに言われると照れくさい。
でも、その新婚時代に私は死んでしまったのか……。
自分の死についてはいくら考えても理解しがたいが、残された旦那さまである白蓮さんのことを考えると、胸が痛い。