「太陽は、沈む?」
「はい。現世と同じ夜はあります。ただ、月は出ません」
月は月の世のものだからかな。
「なるほど……」
少しずつ異なることはあるが、びっくりするような生活習慣の違いは今のところないような気もする。
それにしてもこの廊下、かなり長い。
「ねぇ、この家、すごく大きいの?」
「ここは、宿屋なんですよ。こちらは母屋になりまして、白蓮さまの住居です。もっと先に行くと宿があります」
「宿屋?」
白蓮さんの家だけではないらしく、驚いた。
「はい。白蓮さまはなにかに困ったり傷ついたあやかしや身寄りのない子供のあやかしなどを引き取られて、ひとり立ちできるまでこちらに住まわせているのです」
「へー」
面倒見がいいんだ、彼。
もしかしてそういうあやかしたちが臣下となり、先ほどの建物に集まっているのかもしれない。
「勘介くんはなんのあやかし?」
「僕は波小僧(なみこぞう)です」
「波小僧?」
聞いたことがない。