でも、得意なことを生かして生活できるのは素敵なことかも。
「幽世も面白そうですね」と発言してから、うかつなことを口走ったと後悔した。
面白そうではあるが、ここで暮らしたいという意味にとられては困る。
「俺にただ守られるのが気に食わないのなら、彩葉はここで飯を提供しろ。そうすれば肩身の狭い思いをしなくても済む」
なるほど。
桜庵を再開しようかと迷っていたが、また料理ができるのはうれしい。
ただ、やはりここが幽世というのが……。
「細かいことは勘介に聞け。あいつに身の回りの世話をさせる。勘介!」
「ただいま!」
パタパタとかわいらしい足音が響き、走ってくるのがわかる。
「台所に彩葉を案内してくれ。和花にも紹介しろ」
「承知しました」
白蓮さんと別れた私は、初めて部屋の外に出た。
建物は明治時代を思わせるような趣があり古ぼけてはいるが、手入れも掃除も行き届いている。