「お金はどうしているんですか?」


人間界で買い物をするにはお金がいるでしょ?


「あやかしにも多才なヤツがいてな。歌のうまいあやかしは、現世でアイドルというものをしていて、金を稼いでいる。たしか……川下友久(かわしたともひさ)とか言ったはず――」
「えーっ!」


川下友久と言えば、女子高生に一番人気の国民的アイドルだ。彼があやかしだったの?


「なんだ、知っているのか」
「もちろんですよ。あの切れ長の目に見つめられたら、もう……キュンとしちゃいます」


彼の顔を思い浮かべて言うと、白蓮さんの顔が険しくなる。


「へぇー、俺よりアイツが好きだってことか」


あれっ、怒ってる? 
いや、これはもしかして妬いているの?

アイドルは目の保養であって、決して身近な存在ではないのに。


「好きっていうか……。そうそう、女子高生なら皆好きなんです!」


私だけじゃないのよ?という気持ちを込めておいたが、不機嫌顔が直らない彼に伝わったかどうかは不明だ。


「まあ、いい。陽の世では、それぞれが得意なことをほかのあやかしに提供することで生活を成り立たせている。着物を縫うのが得意なあやかしはそれを作る代わりに、食べ物をもらうというような。変わったところでは、口上手なあやかしが笑いを提供するなんてこともある」


芸人さんと同じか。