やっぱりデリカシーが欠けている?

時々彼がわからない。


「幽世といっても、今までの生活とさほど変わらないはずだ。現世にあるものはほとんどそろっている」
「調味料も?」


食事を作るなんて大口を叩いたあとで、私が作れるのは人間の食べ物であってあやかしのものではないと気づいた。

しょうゆや砂糖などの調味料をさすがに自分で作ることはできない。


「あぁ。人間の食うものはうまいからな。いつからかほとんど同じようなものを取るようになった。ちなみに俺は揚げ出し豆腐とチキン南蛮が好きだ」


和服姿の、しかも妖狐の彼の口からチキン南蛮という言葉が出てくるとは驚きだ。


「そう、ですか。材料があればお作りします」


チキン南蛮は桜庵の裏メニュー。
和風だしを効かせた甘酢に、ネギの入ったタルタルソースが特徴で、常連さんにせがまれると祖母が作っていた。

でもマヨネーズもあるかな。
そこから作るのかしら?