はぁ、よかった。
白蓮さんも少しはデリカシーというものを持っているようだ。
「和花さんにお礼を言わなくちゃ」
「台所にいますから、着替えられたら一緒に行きましょう」
「うん」
似合わないと決めつけていた紅梅色の着物だったが、いざ身に纏い、持ってきてもらった鏡で確認してみると、華やかな色にテンションが上がる。
「なんだ。結構似合ってる?」
なんて小声で自分を褒めたりして。
「そうだな、似合ってるぞ」
「ちょっ……。勝手に入ってこないでください!」
誰にも聞かれていないと思ったのに、突然入ってきた白蓮さんが同意するので照れくさくてたまらない。
「いつからいたんですか? まさか、着替えを覗いてないですよね」
「覗きの趣味はない。そんな姑息な真似をするくらいなら、堂々と見る」
「はぁっ?」
実に男らしい発言のようだが、後半が明らかにおかしい。
しかしすこぶる真面目顔で、冗談言っているようにも見えない。