「聞きかじったことはあるが、あやかしは飲まないのだ。誰かが珍しくて現世で手に入れてきたのだろう。あることも知らなかった」


それなら仕方がないのかな。

いや、まだ口の中に残る苦みを思えば仕方ないで済ませるのも腑に落ちないが、飲んでしまったものはどうしようもない。


「ほら、休め。独活はなかなか効くぞ」
「良薬は口に苦し、ですか……」
「なんだ、それ?」
「よく効く薬ほど苦いということわざです」


意味を伝えると彼は口元を緩め「よく言ったものだ」と感心している。

鈍い頭痛が続いていて座っているのも疲れてきたので、私はもう一度布団にもぐった。


「鬼童丸さんというのは?」
「あぁ、鬼のあやかしだ。そのうち紹介する。目を閉じて」


彼は大きな手を伸ばしてきて、私の目の上を撫でるようにして閉じさせる。


「今は体を休めることだけ考えろ。安心しろ。ずっとそばにいてやる」


そばにいられるほうが緊張すると思ったのに、やはりくたくただったのか、私はいつの間にか眠りに落ちていた。