結婚は付き合うのとは違う。一度契りを交わしたら、お気軽に離縁できるものではない。

それとも、幽世での婚姻はもっと軽いもの?


「それに関しては、俺が焦りすぎたかもしれない。三百年待ったのだから、あと十年や二十年待てる」


私の気持ちが傾くのを待つつもり?


「そうじゃなくて。私以外の方に目を向けたらいかがでしょう?」
「俺が彩葉以外の女を愛すとでも?」


強烈な反論を食らい、しかし不覚にもドキッとした。


「あ、それは……。んー」


どうやら振られてめげているわけではなさそうだが、わりと厄介なことになりつつある。

とはいえ、まっすぐすぎる彼の気持ちがズドンと胸に刺さったのは否定できなかった。


「とにかく、ここで生活をしろ。ただし、この建物からは決して出てはならない。ここにいれば必ず命は守ってやる」


命を守ってくれるのはありがたいけれど……。


「でも……人間界が、いいです……」