「その通りだな……」


彼は眉尻を下げ、肩を落としている。

白蓮さんにしてみれば、三百年という長い年月を経て私をようやく見つけたのかもしれないが、その記憶がまるでない私は現世での平穏な生活のほうが大切だった。


「私は白蓮さんに嫁ぐつもりも、守ってもらうつもりもありません。ただ、今まで通りの生活を送りたいだけです。それに……命を狙われるような世界にはいたくありません」


それが本音だ。三百年前の私は彼を愛したのかもしれないが、今の私は無理。

白蓮さんが窮地を救ってくれた恩人だともちろん理解している。

けれど、記憶がないのに嫁入りしろと言われても、よく知らない人にいきなりプロポーズされたような状態なのであって、結婚詐欺では?と疑うレベルだ。


しかも相手はもふもふの尻尾を持つあやかしだという、とんでもない条件付き。