「ふぅ、まあいい。それでなにを話していたか……」
「黒爛ですよ! 黒爛」
「あぁ、そうだった。襲われた彩葉は虫の息だったにもかかわらず、俺の腕の中で『またいつか会いましょう』と微笑んで息を引き取った」
黒爛に殺されたということ?
まさか、そんな因縁があったなんて。
「私、死んじゃったんですか……」
「そうだ」
と言われても、私はここに生きているのだからピンとこない。
「それから俺がどんな思いでお前を捜していたと思う?」
「三百年も?」
「あぁ。何百年でも何千年でも、もう一度彩葉に会えるのならと……」
彼は一瞬顔をゆがめて、思わずというような感じで私の手を握った。
その行為から、彼が本当に私に会えて喜んでいるのだと伝わってくるような気がして、目頭が熱くなる。
もうひとりになってしまったと絶望していたのに、まさか幽世のあやかしが私を捜し続けてくれていたとは。
正直、まだ半信半疑だけれど、彼が真剣なことだけは伝わってくる。