「俺の姿を見ただろう? ここはあやかしの住む幽世。俺は妖狐だ」
「妖狐……」
彼は説明をしながら再び尻尾と耳を出してみせる。
幽世という言葉は聞いたことがあるが、本当に存在するとは思わなかった。
「白蓮さまは、妖狐の中でも最上位の九尾でいらっしゃいます」
子供に見える勘介くんが、実に滑らかに説明を加える。
「九尾……。あ……」
黄金色の――。
繰り返し見る夢に出てくるのは、こんな尻尾だ。
「どうかしたか?」
白蓮さんは横たわる私を愛おしそうな目で見つめて、尋ねる。
私……ずっと昔にもこうしてもらっていた気がする。ふさふさの尻尾に包まれて、「彩葉、おやすみ」と頭を撫でてもらっていたような。
「いつも夢を見るんです。黄金色の尻尾に包まれてひどく安心する夢を」
「それは夢ではございませんよ」
口を挟んだのは勘介くんだ。
「どういうこと?」
「白蓮さまは彩葉さまをお助けになったのです」