口移し?
嘘……。
私のファーストキスは、記憶がないまま、しかも好きでもなんでもない人――いや人ならざるものに奪われたということ?
あぁ、また熱が出てきそうだ。
「彩葉、顔が真っ青だ。もう一度横になれ」
私の顔を青ざめさせた張本人が、布団の中へと促してくる。
まあ……飲まなければ命を落としていたのだから、ここは感謝すべきところではある。
とはいえ、ファーストキスへの憧れを過大なほどに抱いていた私にとって、ショックだったことには違いない。
これはノーカウントよね……。
そんなことを考えて自分の気持ちに折り合いをつけた。
いや、そんなことより聞かなければならないことがたくさんある。
「白蓮さん、あなたは誰なんですか?」
やはり思い出せない。
というか……人間ではなさそうな彼と会ったことがあるはずもない。
ああして身を挺して助けてくれたから信頼して落ち着いて話していられるが、そうでなければ一目散に逃げているはずだ。