「お前は知らなくていい」
すぐさま彼をけん制した白蓮さんが私の頬にそっと触れたあと、その手を滑らせて今度は首を撫でるので、拍動が速まる。
墓苑で彼に抱き上げられて頬を赤く染めたように、男の人に触れられるのには慣れていないのだ。
「解毒薬を飲ませたから、体はもう大丈夫だ。しかし傷が治癒するにはしばらくかかるかもしれない。薬草は塗ってあるが、すまない」
そうか。羽がかすめた切り傷だけでなく、首を絞められたときの痕跡も残っているのだろう。
ここには鏡がないのでわからなかった。
しかし、助けてくれたのだから謝る必要はないのに。
それにしても解毒剤がなかったら、今頃どうなっていたのだろう。
考えるだけでも身の毛がよだつ。
「解毒剤、ありがとうございました」
「大変だったんですよ。意識がない彩葉さまは飲んでくださらなくて、仕方なく白蓮さまが口移しで――」
「え……?」
「勘介、余計なことは言うな」