彼はずかずかと部屋の中に入ってきて、私の横で胡坐をかいた。
勘介くんは少しうしろに正座している。
「気がついてよかった……」
安堵のため息を漏らす彼に、ずいぶん心配をかけたようだ。
「私……」
「黒爛の羽には毒が仕込まれている。お前の頬をかすめたとき、体内に入ってしまったのだろう」
だから、体が熱くてしびれてしまったのか。
「白蓮さんは?」
彼はかすめたどころか、ぐさりと刺さり血を流していたはずだ。
「俺は大丈夫だ。毒に耐性がある」
とはいえ、血が流れていた光景を思い出して、顔が険しくなる。
「傷は?」
「もうなんともない。俺たちは傷の治りが早いんだ」
彼は左の着物の袖をまくり、ムキムキの上腕二頭筋を見せつけてくる。
そこには傷痕ひとつ残っておらず、安堵した。
「ごめんなさい。私……白蓮さんのこと、ただのチャラい男だと思って……」
「チャラいとは?」
すかさず質問してきたのは勘介くんだ。