まずい。動けない。
しかも、先ほど頬をかすめた羽になにか仕込まれていたのか、体が燃えそうに熱くてしびれてきた。

焦り表情を硬くしていると、黒爛が私に向かって薄気味悪い笑みを浮かべ再び翼を動かし始める。


「クソッ」


赤舌の鋭い爪をよけた白蓮さんは、ふさふさの尻尾で跳ね飛ばしたあと、私のところまでやってきて片手で軽々と抱え、飛んできた無数の羽からよけた。

そして私が見つけた獣道の奥に向かう。


「いったん退散する。大丈夫か?」


すさまじい速さで進む彼に問われ、罪悪感でいっぱいになりながら小さくうなずく。

私……彼をナンパ師だと思い込み、忠告を聞かなかった……。


「まずいな。体温が上昇している。苦しいだろ。すぐに楽にしてやるからな」


やはり黒爛の羽のせいだろうか。
のどが詰まったように息がうまくできなくなり、意識がもうろうとしてきて気を失った。