ダンと地面をひと蹴りしたかと思うと宙を舞い、ひとつ目にひと蹴り入れてから、次は顔なし。
まったく隙のない動きでダメージを与えていく。
しかしその間に黒爛が再び私に向けて羽を放つのでかばうということの繰り返し。
四体も相手にして対等に戦える白蓮さんの力が圧倒的に優位に見えるが、これではきりがない。
そのうち私をかばいつつ戦う白蓮さんの左腕に、とうとう黒爛の羽が刺さってしまった。
白蓮さんは左腕の羽を自分で抜き去り、血が流れることも意に介さない様子で再び向かっていく。
「お願い、やめて!」
彼の左手の指先からポタポタと真っ赤な鮮血が流れるのに気づいて、声を振り絞った。
懇願してもやめてくれる相手ではないことはわかっているが、私にできるのはそれくらいだ。
黒爛に訴えかけたとき、うかつにもあの赤い目と視線を合わせてしまった。