「彩葉、下がれ」


私に背を向けたままの白蓮さんに強い口調で指示されて、カクカクうなずく。

私は目を白黒させながら這うようにしてうしろに下がり、木の陰に隠れた。

しかしその木は太くはなく、身を隠しきれない。
かといってほかに隠れられそうな場所もない。


いっそ逃げたほうがいい?と考えたものの、神社の出口は黒爛が立っている方向だ。

私はあたりをぐるりと見まわしてみた。
すると、下がった先に細い獣道のようなものがあることに気づいたが、これ以上森の中に入っていくのもためらわれる。

そんなことを考えているうちに、黒爛が翼をバサッバサッと動かして風を起こしたかと思うと、羽が無数に飛んできた。


「キャッ」


私をかばうようにして立った白蓮さんがそれのほとんどを尻尾で払いのけたが、一本飛んできて頬をかすめる。


「卑怯なヤツだ。俺を狙え!」


白蓮さんは怒りをあらわにして黒爛に向かっていく。