茶碗蒸しは大盛況で、夕食はかなり盛り上がった。

前世の私のことでしんみりするのでは?と心配したが、思い出ではなく始まりだと宣言したからか、皆笑顔で純粋に食事を楽しんでくれたように思う。



その日の晩。
私は白蓮さんに宿屋再開のお礼を改めてしたくて、彼の部屋を訪ねた。


「宿屋のこと、ありがとうございます」


私の生きがいになりそうと彼は言ったが、その通りかもしれない。

幽世で生きていくと決めた今、現世で桜庵を続けることは難しくなったけれど、新たな目標ができた。


「彩葉の願いは叶えないとな。だが、お前が大変になるんだぞ?」
「たしかに忙しくなるかもしれませんけど、楽しいと苦になりませんよ」
「前世のお前もそんなことを言っていたな」


彼は目を細める。


「それにしても、大活躍だな。黒爛から守るために連れてきたわけだし、なにもせずにここにいてもいいのに」
「なにもしないなんて、余計に苦痛ですよ」