「彩葉を傷つけるヤツは容赦しない」
「ふん。俺はその女ほどバカじゃないんでね」
昨日はそそくさと退散した黒爛だったが、なんと今日は薄気味悪い妖怪のようなものを三体引きつれていた。
ひとつ目の一本足に、顔のないもの。
赤い舌を出した鋭い爪を持つ見たことがない四つ足の生き物。
「な、なに?」
全身に鳥肌を立てて気絶しそうな私とは対照的に、白蓮さんは動じる様子もなく微動だにしない。
「一本ダタラにのっぺらぼう、そして赤舌か。それだけで俺に敵うとでも?」
のっぺらぼうしかわからないが、やはり妖怪なの?
現実とは思えない光景に、体の震えが激しくなる。
「お前の弱点はその女だろ?」
ニヤリと笑った黒爛の背中に大きな黒い翼が見えたので思考が固まる。
カラス? いや、天狗?
彼も人間じゃないの?
「はー。争いごとは好まないのだが」
盛大なため息をついた白蓮さんが、ふさふさの九本もある尻尾を出したので、息が止まりそうになった。