そうか。私は祖母にレシピを教わったが、その頃はなにもかも手探りだったんだろうな。


「うまかったなぁ。彩葉さまが亡くなられて誰も茶碗蒸しについて触れられなくなりました。でも、こうして戻っていらっしゃって……」


彼が珍しく感極まった様子で言葉を詰まらせる。

私は自分がこれほどまでに歓迎されていることに、感激せずにはいられなかった。


「また食べたいなあと。今度こそ、ずっと食べられるようにお守りします。あ、それじゃあ茶碗蒸しのためみたいですね。あはは」
「そうでしたか。それじゃあ、今回のはうんと上達しているはずです。なにせ厳しいおばあちゃんのダメ出しに耐えて完成した茶碗蒸しですから」
「それは楽しみです」


彼は笑顔を取り戻し白い歯を見せた。



大広間の机に茶碗蒸しが並びだした頃、白蓮さんがやってきた。


「うまそうだな」


彼の視線はやはり茶碗蒸しに注がれている。