白蓮さんが机に肘をのせて頬杖をつきながら尋ねてくる。
束ねられていない艶のある黄金色の髪がふわっと動いた瞬間、ドキッとした。
彼の仕草一つひとつにいちいち鼓動が速まるのはどうしてだろう。
「大丈夫ですよ。お料理はとても楽しいです。実は、最近考えていることがあって」
「なんだ?」
「宿屋を再開できないでしょうか? 困ったあやかしたちは今まで通り滞在してもらうとして、そうじゃないあやかしたちにも来てもらえるように。私、料理はできますし」
提案すると、彼は目を丸くしている。
「再開か、考えたこともなかったな」
「たとえばですけど……河太郎くんが元気になってもし彼が希望するなら、ここで働けるようにしたらどうかなって」
志麻さんは自立していったが、河太郎くんには難しい気がしたのだ。
だから、勘介くんや和花さんのようにここに残って働くという選択肢が欲しいなと。
「なるほどな。でも、大変だぞ」
「以前働いていたあやかしたちに戻ってきてもらうことはできませんか?」