彼は再びお酒を口にしてから私を見つめた。
「彩葉も膝の上に来い」
「えっ? もう酔ったんですか?」
なに言ってるのよ!
「あぁ、酔った。酔うと甘えたくなるたちでな」
いつもどれだけ飲んでも酔わないでしょ?
「それは初耳です」
「少しはほだされてもいいだろう? お前は河太郎より手ごわいな」
「お褒めにあずかり光栄です」
照れくささを隠して淡々と返事をすると、彼は噴き出した。
「雪那を足して二で割るとちょうどよさそうだ」
「雪那さんを足さないでください!」
あの積極性。すごいなとは常々感じているけれど、私も!とはならないし。
「だなぁ。足した瞬間、雪那に飲み込まれそうだからやめておこう」
彼は勝手なことを口にしてクスクス笑っている。
河太郎くんとの距離が少し近づいたからか、上機嫌だ。
「それにしても彩葉はこちらに来てから働き通しだ。疲れてはいないか?」