その晩は、お風呂から上がると白蓮さんに呼ばれて彼の部屋に向かった。

どうやら相当飲める口の彼のために、冷酒を携えることは忘れずに。


「お酒をお持ちしました」
「おぉ、気が利く」


今日用意したのは、桜庵にも置いてあった辛口の大吟醸。

私は飲まないのでよくわからないけれど、すっきりとした味わいで、冷酒でたしなむと香りが引き立つと常連さんがよく言っていた。


彼の風呂上がりの浴衣姿は、目のやり場が困るほど色気が漂っているので、どうしていいのかわからない。

部屋の端に置いてある机に冷酒を置き、視線を伏せたまま彼の向かい側に座った。


「彩葉も飲んでみるか?」
「ですから、まだ飲めないんですって」


果たして幽世で現世の法律に従う必要があるのかどうかはよくわからないが、やはりそこは守っておきたい。


「うまいのに」
「不良妖狐ですね」
「またそれか……」


白い歯を見せた彼は、すぐに冷酒を口に運んだ。