それから、宿の人たちに配ってくれただろう鬼童丸さんや雪那さんたちも入ってくる。
「あれっ」
鬼童丸さんは白蓮さんが河太郎くんを抱っこしている様子を見て目を丸くした。
「あら、無口な坊やじゃない。鬼童丸さま、私もお膝の上にのりたいですわ」
雪那さんが甘えた声を出した途端、鬼童丸さんがカチカチに固まったのがわかって噴き出しそうになる。
「か、勘介。たまには一緒に食うか」
鬼童丸さんは雪那さんの発言をスルーして、勘介くんのところまで行き抱き上げる。
私はそのときとあることに気がついた。
以前白蓮さんは、勘介くんに抱っこしてもらうと安心すると言われたと話していたが、それを実践しているのだと。
「それじゃあいただきましょう」
私は皆を促し、自分もドーナツを口に運んだ。
「お、もちもちじゃないか。ドーナツというものは初めて食したが、うまいもんだな」
「お豆腐が入っているからもちもちするんですよ。勘介くんと河太郎くんが潰してくれました」