どうしたのだろう。

黙ってそのまま従っていると、彼は自分の部屋の扉を開けて、なんと私を入れてくれる。
こんなことは初めてで驚愕したが、うれしくて涙が出そうなほどだった。


河太郎くんは小さな机にわらび餅を置いたが、食べようとしない。

私は向かいに座って話しかけた。


「どうしたの? おいしかったでしょ? どうぞ」


つまみ食いのときは珍しく口元が緩んでいたので気に入ってくれたと思ったけれど、違うの?

彼はなぜか私をじっと見つめて、皿をこちらにずらす。


「あっ、もしかして私の分を気にしているの? ありがとう。でも何回も食べたことがあるから大丈夫」


私は皿を押し返したが彼は首を横に振った。
こんなに優しいあやかしなんだ。


「それじゃあ、ひとつもらうね?」


私が言うと、彼はうんうんとうなずき、自分もようやく食べ始める。


「すごく上手にできてる。河太郎くん、おやつ作ったの初めてでしょ?」