「鬼童丸さま! 私、お手伝いをしていたところなんですよ。もうすぐできますわ」
雪女なのに鬼の形相で『凍らせてやろうか』とすごんでいた雪那さんは、一転、甲高い声で鬼童丸さんにすり寄っていく。
あなたはまだなにもしてないよね?
「それは助かる」
「当然ですわ。鬼童丸さまに一番おいしいものをお届けします」
「はははは……」
乾いた笑い声を漏らす鬼童丸さんの顔がこわばっている。
彼は雪那さんが料理をしないことを知っているはずだ。
わらび餅はそのあと無事に冷やされて、きな粉をまぶして完成。
鬼童丸さんと雪那さんが仲良く去ったあと、ひとり分ずつ皿に盛る。
そして、残りを勘介くんとおいしそうにつまみ食いしていた河太郎くんに声をかけた。
「河太郎くん、白蓮さんたちと同じ部屋で食べるんだけど一緒に食べない?」
緊張も緩んでいるしいい返事が聞けるのではと期待したのに、彼は途端に表情をこわばらせる。
そして首を大きく横に振ったあと、自分の分の皿を持ち、私の手を引っ張って部屋のほうに歩き始めた。