「な、なんなの? こんなところでナンパしてないで都会のかわいい女の子が集まる場所に行けばいいでしょ? もうだまされないんだから!」
私は大声を張り上げて、虚勢を張った。
白蓮さんは『黒爛はおそらくまたやってくる』とは言ったが、あれは私を怖がらせるための演出だと思っていた。
まさか本当にやってくるとは。
またふたり一緒?
「ナンパ? お前、頭が弱いらしいな」
「し、失礼よ!」
昨日から不愉快で仕方ない。
けれどとっさに顔を伏せた。
赤い目と視線が合って金縛りにあったように動けなくなったことを思い出したからだ。
「ははっ。少しは学習能力があるらしい。しかし、お前ごときひとひねりだ」
カサッカサッと、掃除されておらず積もりに積もった落ち葉を踏みしめる音が近づいてくる。
私はうつむいたままあとずさりしたがお社にぶつかり、その拍子に備えてあった弁当が転がってしまった。