しばらく待ってみたが無理そうだと感じ、「それじゃああとで持ってくるね」と言い残して離れようとした。
私が台所に向けて足を踏み出した瞬間、カタッと小さな音がしたので振り向くと、河太郎くんが顔を出している。
余計な言葉はいらないと思った。
ただ笑顔で手を差し出すと、彼は握ってくれた。
私が河太郎くんを連れていったからか、和花さんが準備の手を止めて無言で彼をじっと見つめる。
けれど物怖じしない勘介くんは、河太郎くんのところにやってきて、「一緒にやろうよ」と手を引いた。
ちょっと強引すぎるのでは?とヒヤッとしたが、意外にも河太郎くんは嫌がっている様子もない。
「今日はわらび餅だよ!」
「彩葉さま、材料はこれだけでいいの?」
勘介くんが高らかに宣言したあと、和花さんが尋ねてくる。
「そう。シンプルでしょ? わらび粉とお砂糖と水。あとはきな粉だけ。作り方も簡単なの。でもちょーっと力がいるから、男の子チーム頑張ってね」