もう神さまの話し相手をする祖母がいないので、私がその役割を引き継ぐべきなのかもしれないと思っている。


「こんにちは。私のお弁当で悪いんですけど、どうぞ」


お社の前で弁当箱を取り出して備え、手を合わせる。

今日はぶりの照り焼きをメインに、きんぴらごぼうやがんもどきが入っている。


そういえば、昨日の弁当は回収し忘れたな……。

放っておくと野良猫の餌になってしまい荒らされるので、お供えをしたら持ち帰り、ありがたくいただくのが祖母の習慣。


しばらくして弁当箱の蓋を閉めようとしたとき、妙に生暖かい風がまとわりついてくるのに気がついて嫌な予感がした。


「こんなところにひとりで来るとは。襲ってくださいと言っているようなものだな」


足音もなく現れたのは黒爛だ。

瞬時に昨日のことがフラッシュバックしてきて、緊張が走る。