その後、蒸したプリンはなかなかの上出来。


「和花さん、黒蜜ソースを作ってくれる? 焦げやすいから気をつけて」


ワイワイしているうちに、プリンはできあがった。


「いい匂い!」


勘介くんが大興奮。


「豆乳ベースだからさっぱりと食べられるわよ。宿の人たちにも配りましょう」


私は早速河太郎くんの部屋に向かった。


「河太郎くん。おやつがあるの。食べない?」


物音ひとつしない部屋に声をかけると、すーっと扉が開いた。


「これ、プリンと言うの。甘いものは好き?」


プリンを見せながら問いかけると、彼はほんのわずかに首を縦に動かす。


「よかったー。食べてみてね。あとで感想を聞かせてもらえるとうれしいなぁ」


幽世のあやかしの口にも合うのか知りたいというのもあるが、とにかく会話のきっかけが欲しい。

しかし彼はいつものように無表情でプリンを持って引っ込んでしまった。


「はー。焦っちゃダメね」


こちらの気持ちを押しつけてもきっとうまくいかない。

とにかくプリンをおいしく食べてくれることを祈ってその場を離れた。