「それで、どうして俺じゃなくて鬼童丸に聞いているんだ?」


一転、白蓮さんの視線が鋭くなった。
あれっ、不機嫌は直ったんじゃなかったの?


「どうしてって……」


どうしてだろう。
別に白蓮さんに聞きにくいわけでもないのに、鬼童丸さんに声をかけていた。


「あっ、そうか」
「なにをひとりで納得してる?」
「白蓮さんは自分が大変な思いをしたことは話さないからですよ。心を砕いたことや尽力したことをぺらぺら自慢しないでしょ? だから鬼童丸さんに聞かないと、白蓮さんのことがわからないんです」


河太郎くんのことを知るのが一番だったが、白蓮さんがどんな対応をしたのかも知りたかった。

おそらくこの宿のお客さんのことで白蓮さんが関わっていないということはまずないからだ。

しかも、志麻さんがそうだったように、彼が優しいが故、彼らをここにとどめていることもわかっている。

でもきっと彼は、自分が骨を折ったことは口にしない。


「ほぉ、俺に興味が出てきたということか」
「別にそういうわけじゃ……」