「しかし、川の水が突然干上がりました。美しい水を横取りしたかった月の世のあやかしの仕業です。河太郎の両親は川を守ろうと奮闘して……。結果、月の世のあやかしに殺められてしまいました」


私は目を閉じて天を仰いだ。
幽世は悲しい話が多すぎる。


「それを知った白蓮さまが、ひとりになってしまった河太郎をご自分で引き取りに行かれたのです。英雄の忘れ形見は大切に育てると」

「そんなことが……」

「はい。ですが、河太郎はしばらく抜け殻で、何時間でもボーッと空を見上げている始末。誰が話しかけても反応もせず、私たちもお手上げの状態でした」


河太郎くんの気持ちはよくわかる。

あまりにショックなことがあると、なにを考えたらいいのかすらわからなくなるのだ。


「特に、白蓮さまと私を見ると逃げていきます。両親を襲ったのは大人の男でしょうから、似た風貌の私たちのことも怖いのかと」


トラウマか……。