「いえいえ。白蓮さまは彩葉さまのこととなると目の色がお変わりになる。まあ、でもたまにはいいでしょう。いつも無茶ぶりの数々ですからね。たまには私も褒美にあずかりたい」
彼は意外なことを口にして白い歯を見せた。
白蓮さんはまさに右腕となり働く鬼童丸さんをかなり頼りにしている。
白蓮さん自身も街に下りるが、豆吉くんの件の処理を彼に投げていたように、〝無茶ぶり〟がないとは言えない。
おそらく私が知らないところでも、白蓮さんの指示で右往左往しているのだろう。
しかし信頼していなければ任せられないので、ふたりの絆は強固なものだと勝手に想像している。
「あっ、お酒飲まれます?」
「いいですね」
白蓮さんも鬼童丸さんもお酒には強いようだが、普段はあまり飲んでいるところを見ない。
たまにはと思って声をかけると、とてもうれしそうな返事が来た。
「熱燗でいいですか? 大広間にお持ちします」
「はい。それでは先に」