しばらくはさも痛そうに前かがみ気味で歩いていたが、誰もいない裏路地に入った瞬間、背筋を伸ばす。


「とうとう仮病使っちゃった」


ちょっとした罪悪感を感じつつも、もっと早くこの手を使っておけばよかったとも思った。


もう学校に行きたくないな……。

勉強が嫌だとか、学校生活が楽しくないとか、そういうことではない。

本当は泣きたいくらいなのに笑っていなければならないのは、なかなか努力が必要なのだ。


「桜庵を再開しようかな……」


まだ祖母ほど料理はうまくないが、なんとか店を続けられないだろうか。

窮屈な思いをして高校に通う理由が今の私には見つけられなかった。


そのまま家に戻ろうとしたが、カバンの中の弁当を思い出した。

『弁当箱は白木に限る』と譲らなかった祖母がいないので、他の皆と同じようにかわいらしい弁当箱に変えてもよかったのに、いまだわっぱ弁当箱。