こんな言葉が飛び出すとは想定外すぎて、すぐに返せない。
どう考えても幽世のしがらみに巻き込んだのは俺。
それなのに、ばあさんも彩葉も寛容すぎる。
「そうだな。この悪女め。彩葉、もう嫁になれ」
「それとこれとは話が別です」
なんだ。そういう流れじゃないのか?
ガックリきたが、焦るつもりはない。
たとえ娶れなかったとしても俺には彼女を守り続ける責任がある。
ばあさんと約束したし。
「お酒、どうぞ」
「ありがとう」
彩葉に酌をされるのも悪くない。
「あぁ、これだ。ねぎがいい仕事をしているチキン南蛮。懐かしいなぁ」
「でしょ? 何度も食べて覚えたんですよ」
「あぁ、最高にうまい」
俺が口に運ぶと、実にうれしそうな顔をして彼女も食べ始めた。
「月もしばらく見納めかなぁ」
「また来ればいいだろ」
「そっか。幽世やーめたもアリだった」
「そうはさせるか」