「それは気のせいだろう」
そんなことまで思い出さなくていいから。
「あはは。でも、すごく温かかった。あの尻尾がなければ私は今頃、両親のところにいたかもしれません。ありがとうございました」
まったく、ばあさんも彩葉も、お礼を言わなければならないのは俺のほうだというのに。
「俺のせいでつらい思いをさせた」
「そうですよ」
彼女は唇を噛みしめて眉間にシワを寄せたがそれも一瞬で、すぐに笑顔を作る。
「幽世で目覚めて話を聞いたときは、なんで殺されそうにならなきゃいけないの?って白蓮さんのことを恨みました」
「はっきり言うなぁ」
「ふふふっ。でも、私のせいでもあるなぁって」
「彩葉の?」
どういうことだ?
彼女は完全に被害者だ。前世でも現世でも。
「そうです。だって前世で白蓮さんを好きになったのも私ですし、来世で会うことを約束したのも私なんでしょ? 私って悪い女ですね。白蓮さんに三百年も期待させたまま待たせるなんて」