「来てくれてありがとう」
「彩葉……」


まさかお礼を言われるとは。
そのために起きていたのか?


「でもおばあちゃんが、尻尾さんが疲れちゃうからそろそろ終わりにしてねって」


ばあさんがそんなことを?


「彩葉はね、嫌だって言ったの。でも尻尾さんが疲れちゃうのも嫌なの。おばあちゃんが、尻尾さんは来なくてもずっと近くにいてくれるって。本当?」


つぶらな瞳で見上げられ、たまらない気持ちになる。

この先も毎日こうしていてやりたいが、やはり俺は幽世のあやかしたちも守らなければならない。
本来の仕事を忘れていては、前世の彩葉に叱られそうだ。


「あぁ、本当だ。彩葉が呼べばすぐに来る。また尻尾を触りたくなったら呼べばいい」


彼女の頭を撫でながら伝えると、「うん!」と目を輝かせた。

俺はこの笑顔を守らなければならない。絶対に。


「今日はいい?」
「いいぞ。……あ」


また勢いよく尻尾に飛びつかれて、腰が砕ける。

しかしたまらなく幸せな時間で、体に力がみなぎっていくのを感じたのだった――。