俺は彼女の隣で朝日が昇るまでうとうとしてしまった。
なにかに引っ張られている気がして瞼を持ち上げると、クリクリの目をした彩葉が俺をじっと見つめている。
しまった。彼女が目覚める前に姿を消すつもりだったのに。
「あの、だな……」
「尻尾!」
どう取り繕うか考えていると、彩葉は俺の胸めがけて突進してきた。
そして抱きつき離れようとしない。
「眠れたか?」
「うん。もう帰る?」
「そうだな。だが彩葉がばあさんの飯をちゃんと食えたらまた来よう」
「ほんとに?」
首を〝く〟の字に曲げてまっすぐな眼差しを送られては、嘘などつけるはずもない。
「あぁ、約束だ」
それから〝指切りげんまん〟という現世の約束の儀式をして、俺はいったん姿を消した。
「白蓮さま」
外に出ると鬼童丸が待ち構えている。
「なんだ?」
「少しお休みください。彩葉さまには私がついております」
「いや。俺が守らねば」