「尻尾でいいのか?」


本当は尻尾に触れられと力が抜けてしまうので大の苦手だ。
しかし彼女が求めているなら、それくらいはいくらでも我慢できる。

すぐさま九本の尻尾を出して彼女を包み込む。
すると小さいくせして力強く握りしめてきたので、案の定フニャッと力が抜けてしまった。

しかし苦悶の表情を浮かべていた彼女がすやすやと眠り始めたのを見て、これでよかったのだと感じた。


「彩葉、ごめんな」


三百年待った。

彩葉が必ずまた生まれ変わってくると信じていた俺が、妙なソワソワを抑えられなかったあの日、彼女は生まれた。

うまくは言えないが、彼女から発せられる気のようなものを受け取った俺は現世に走り、念願の再会を果たした。

とはいえ、まだ赤子の彼女が本当にあの彩葉なのかと疑うこともあったが、両親に同じ〝彩葉〟という名前を授かったと知ったときは、雷に打たれたような衝撃とともに喜びがこみあげてきたのを覚えている。