俺はそれになんと返したらいいのかわからなかった。
神社の眷属ではないが、妖狐であることには違いないのだから。
しかし、それを明かすべきか否か。
「ごめんなさい。バカなことを言ってますよね。でも、彩葉まで失いたくないんです」
気丈に振る舞っていたばあさんが、初めて涙をほろりとこぼした。
「彩葉さんは、いつもどの部屋で眠っていますか?」
「えっ……。今は二階の東側の部屋に私と一緒に」
「今晩は、ひとりで寝かせていただけますか?」
もしかしたら、また尻尾に包んでやれば眠るのではないかと考えたのだ。
「……はい。どうかよろしくお願いします」
ばあさんはなにも聞かずに俺の言う通りにしてくれた。
聞いていた部屋に姿を現すと、もうすでに布団にくるまっていた彩葉が眉間にシワを寄せて顔をゆがめているのがわかった。
「彩葉」
小さな声をかけたが反応はない。