「おばあちゃん、おじいちゃんと会えた? お父さんとお母さんも元気かなぁ」
私、佐伯(さえき)彩葉はさびれた墓苑の古びた墓石の前でしゃがみ込んで話しかける。
四十九日前に亡くなった祖母の納骨を済ませたのだ。
祖父は私が生まれる前に他界していて、写真でしか知らない。
祖母は幼い頃に事故で亡くなった両親の代わりに私を育ててくれた。
しかし、突然の心臓発作で帰らぬ人となり、とうとうひとりになってしまった。
けれど、今日は泣くまいと決めている。
私が泣いては、祖母が祖父のところに旅立てない気がしたからだ。
「ね、お弁当持ってきたよ。肉じゃがでしょ。それと、だし巻きたまごは外せないよね。あとは、切り干し大根の煮物。まあ、全部私の好物だけど」
小料理屋を営んでいた祖母の手伝いをしながら料理を教わり、一応祖母の味に近いものは作れるようになったはずだ。
しかし、話しかけてももう祖母は答えてくれない。