「彩葉の両親は事故で亡くなりました。大きな事故でしたのに、彩葉が無傷で助かったのは奇跡だと警察の方に言われました。神さまが助けてくれたくらいでないと説明がつかないと」


たしかに、両親は即死だった。
あのまま俺が手を出していなければ、彩葉も同じ運命をたどっていただろう。


「両親がいないとわかると、彩葉は狂い泣くようになりました。まだ両親が必要な年頃ですから、無理もありません。でも、そのうち尻尾と口にするようになったんです。最初はなんのことかまるでわかりませんでしたが、尻尾が助けてくれたとしきりに言うので、あの事故から彩葉を守ってくれたなにかがいるのではないかと思いました」


ばあさんの視線は俺に向いたままで逸らされることはない。
まるでその尻尾の持ち主が俺だと見抜いているかのようだった。


「そんな話、信じられないでしょう? でもお客さん、あの事故のあとにここに通ってくださるようになりましたよね。それで、もしかして……なんて思ってしまって。どこかの神社の神さまのお使いではないかなんて。今も、こんなに穏やかに眠りについたのは事故以来で……」