「病院には?」
「昼に連れていきまして、点滴は打ってもらっています。これ以上食べられないなら入院だと。もしかしたら近く店を閉めるかもしれません」


俺は彩葉の命が風前の灯火となっていることに愕然とした。

なんとか彼女だけでも救えたと思っていたがそれは間違いで、両親を失った彼女が生きる力を失っていることは一目瞭然だったのだ。

しかし、うつろな目で俺を見つめた彩葉が「尻尾」と小さな声でつぶやいたとき、覚えているだけでなく尻尾を求めているのではないかと感じた。


彩葉は俺の顔を見ると、安心したようにすーっと眠りについた。

ばあさんは驚いていたが、座敷に彼女を寝かしたあと、頼んでもいないだし巻きたまごを出してくれた。


「私、おかしなことを言うかもしれませんが、聞いていただいてもいいですか?」
「はい」


ばあさんが深刻な顔をして妙な前置きをするので緊張が高まる。