――二月の雪が降りそうなほど寒い日。


間一髪、事故現場で彩葉を助け、人間の救助が来るまで気を失った彼女が凍えないように尻尾で温め続けた。

救助が来て俺は消えたが両親を一度に亡くした彼女のその後が気になって仕方なく、店の再開と同時に客を装って訪ねるようになった。


ばあさんは店の奥の部屋で彩葉をあやしていたようだったが、彼女はすぐに泣きだして、なかなか料理に手が回らない。

そうしていると、しびれを切らした客が次々に帰ってしまい、ばあさんは頭を抱えていた。
とはいえ、傷ついた彩葉優先でと奔走していた。

俺は今度こそ守ると決めた彩葉の大切な両親を助けられなかったという後悔で、最近は食事ものどを通らない。
ほとんど飲み込むようにして胃に送っているような状態だ。

数品注文して、あとは日本酒をちびちびと口にしていた。


「お待たせしてすみません」
「かまいませんよ」