それからふたりで墓参りに行った。
目を閉じて手を合わせたまましばらく動かなくなった彼女が、両親やばあさんとなにを話していたのかは知る由もない。
しかし、目を開いたときには実にすがすがしい表情をしていたので、幽世に行くことに後悔はないのだと感じた。
寂しくなったらまた戻ってくればいい。
そのあとは桜庵に向かった。
「白蓮さん、夜までここにいてもいいですか?」
「かまわないが、なにか用があるのか?」
「今日は満月なんですよ。ふたりでお月見しませんか? 私、なにかお料理を作りますから」
そういうことか。
「それはうれしい。そうしよう」
カウンターの向こうでトントントンと軽快に包丁の音をさせ始めた彩葉を見ながら、俺は昔のことを思い出していた。
俺がこの店に初めて訪ねてきたのは、彩葉の両親の事故のあと、ばあさんが店を再開した日のことだった。