毎晩尻尾に触れられるというちょっとした拷問――弱々しい自分を見られるという意味で――はあるが、幼い頃のように包み込んでやれることに、幸せを感じていた。

だから彩葉の選択に歓喜し、にやけるのを必死にこらえなければならないほどだった。

嫁入りは拒否という落ちはついていたが……。



幽世にとどまることを決めた彼女が、一度現世に戻りたいと訴えてきた。

身の回りのものや、ばあさんと両親の位牌を取りに行くということだったが、学校に退学の手続きもしたかったらしい。

ちょうど春休みという長い休みだったらしく、彼女が長きに渡り現世にいなかったことは気づかれていないようだ。

クラスの仲間とはそれなりにうまくやっていたようだが、馬が合う友人とまではいかなかったらしい。

あっさりと退学届けというものを提出してきた彼女は、校門の外で待っていた俺のところに駆け寄ってきた。